ブログ|浜松市北区初生町で動物病院をお探しの方は佐野獣医科病院まで

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  • お腹に潜む時限爆弾 ~胆のう疾患のお話~

    21.03.01(月)

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    皆さまこんにちは。副院長の佐野です。

     

    まずはお知らせです。

    今月から、午前中の診察受付が11時40分までとなっております。

    昼は主に手術の時間なのですが、午前の診察が押した結果手術ができないということがたまに起こるようになってしまいまして、皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解、ご協力をお願いいたします。

    フード等の購入や薬の受け取りなど、「診察室に入らない用事」でしたら12時まで対応いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

     

    あ、祝日は手術はやりませんので今まで通り12時まで受け付けますよ。10時からですけどね。

     

     

    ではお知らせも書いたところで、今日は「胆嚢(たんのう)」のお話です。

    皆さん胆のうってわかりますかね?日常生活ではほとんど意識しない臓器なので、まだ人間ドックとかも受けていない若い方なんかはピンとこないかもしれません。

    ヒトの模式図ですが、真ん中へんにある緑色の小さいやつ、ここが胆のうです。

    肝臓で作られる、「胆汁」という消化液の一種を貯めている袋状の臓器で、肝臓に埋もれるように位置しています。

    貯まっている胆汁は、総胆管という管を通して十二指腸に排出され、主に脂質を吸収する助けになります。

     

     

    このところ、なぜかこの胆のうの手術が何件か続いたので、今回は胆のうの病気について書きます。

    とはいえ胆のうの病気と言っても色々あるですが、なかでも手術が必要になるような病気というと、「胆石症」「胆のう炎」「胆のう粘液嚢腫」の3つが代表格かなと思います。

     

    まず胆石症ですが、胆のうの中に結石ができる病気です。

    人間はコレステロールが主成分のコレステロール結石が多いそうですが、わんちゃんでは胆汁中の色素成分「ビリルビン」が結晶化して石になる場合が多いようです。

    胆のうの中で石がコロコロあるだけだとあまり症状が出ないため、健康診断とかでたまたま見つかる場合が多いですね。その時点であわてて手術や治療をする必要はあまりないでしょう。

    ただ、胆のう管や総胆管に石が詰まると途端に具合が悪くなります。この場合は緊急手術になることも多いです。詰まった状態で放置すれば重度の黄疸や胆嚢破裂などを起こして死んでしまいます。

     

    続いて胆のう炎です。こちらは主に小腸にいる細菌が、総胆管を登ってきて胆のうに感染することで起こります。

    基本的には細菌感染による病気なので、抗生物質を用いた内科治療が一般的なのですが、感染が重度だと手術が必要になります。

    特に、感染した細菌が何らかのガスを発生させる「気腫性胆のう炎」という状態になると、胆嚢破裂のリスクがかなり高くなるため、一刻も早く手術をすることが推奨されます。

    エコー検査で胆のうの表面が白く光り、その奥が影になっています。こういう画像が取れると、石やガスを疑う必要があります。

     

     

    最後に、胆のう粘液嚢腫

    あまり想像できない病名だと思います。実はこの病気は人間ではほとんどないらしいのです。

    グーグルで検索してみても、動物病院とかペット関連ばかりで、人間のお話は全然出てきませんね。

    しかし、ワンちゃんでは結構な発生率でして、胆のう手術の6~7割くらいはコレじゃないでしょうか?(私の感覚的な話で、全然根拠とかないですが)

     

    どんな病気かというと、胆汁がネバネバのベトベトに固まってきてしまう病気です。その結果、総胆管が詰まって破裂したり、黄疸が出たりします。

    ただ、胆石症と同じく、いざ詰まるまではあまり症状が出ないのが特徴で、やはり緊急手術のようなことになりがちですね。タイトルにも書いた通り、まるで時限爆弾のような病気です。なんともなかった子が、突然胆のう破裂を起こして数日のうちに亡くなってしまう…なんてこともあり得ます。

     

    この病気、実は原因がわかっていないのです。胆汁に含まれる「ムチン」というネバネバ成分が過剰になってしまうのですが、なぜそうなるのか未だ未解明です。

    シェルティーやシュナウザー、チワワ、ポメラニアンなど、一部の犬種で発生が多いことから何らかの遺伝の関与が疑われていたり、高脂血症やホルモン疾患との関連が疑われていたりしますが、「コレ!」といった原因はわからないんですよね…。

    なので残念ながら予防もできません…。肝臓への負担軽減などの目的で低脂肪食への変更が推奨されますが、定期的な健康診断で発見して、手術のタイミングを見極めるために経過観察する、というのが一般的な対応でしょう。

     

     

    てなわけで、胆のう粘液嚢腫の手術の様子を少しご紹介します。

    苦手な方は写真が出なくなるとこまで飛ばしてくださいね!

     

     

    画面中央、器具でつまんでいる白っぽいやつが胆のうです。周囲に肝臓がくっついています。

     

    胆のうを切除する際、破裂して中身が飛び出ないよう先に吸い出してしまいます。が、ネバネバが重度だとこれが全然吸えないんですよね…。

     

    肝臓とくっついている所をはがしていきます。奥の方に太い動脈があるので慎重に…!

     

    胆嚢の根本を糸で縛って切除します。奥を攻めすぎると大事な血管を傷つけちゃうけど、あまり上過ぎると胆のうが残ってしまいます。

     

    取れた~!!切除した切り株と、肝臓の剥がした面からの出血を確認して、やれ一安心、です。

     

     

    ちょっと画質が荒くて見づらいですが、結構奥まった部位で、結構細かい作業だというのが伝わりますかね?

    犬猫の胆のう手術は、比較的リスクを伴う手術です。仮に健康な動物に手術をするとしても、数%は手術により亡くなってしまうかもしれません。

    それが、高齢で体調も万全でないとなると、長時間の麻酔に耐えられなかったり、細かい出血が止まらなかったり、術後の炎症が強く出たりといった、不測の事態が起こっても不思議はないです。

     

    そういうわけで、胆のう手術の一番難しいところは、実のところ手術の内容よりも、「手術するべきかどうかの見極め」ではないかと思います。

    こればっかりは、その子その子によって状態が全く違うし、ご家族の考え方にもよるので一概に言えません。

    獣医さんの間でも意見の分かれる所です。

    「病気が見つかった時点で、体調を崩す前に取ろう!」

    「症状もないうちからリスクを冒す必要ない、具合が悪くなってきたら手術しよう!」

    どちらも間違いではないでしょう。

    (ちなみに私は、基本的には後者のスタンスに近いかな?)

     

    病気にならないのが一番ですが、長生きすればこそ増えてくる病気です。

    胆のうの病気は、エコーの検査で簡単に見つかるものが多いです。定期的な健康診断をして、もしも見つかってしまった時は、病気についてよく知り、悔いのない選択をしたいですね。

    その選択の助けになるために私たちはいますので、気になることはなんでもご相談くださいね!

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