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今年も学会行ってきましたー。
19.02.26(火)
本文は↓をクリック。
みなさんこんにちは。副院長の佐野です。
3日間も病院を空けまして、ご迷惑をおかけしました。
昨年同様、「獣医内科学アカデミー」という学会に参加してきましたよ。
昨年のブログ記事。↓
昨年も非常に面白い、「人工血液」の話にめっちゃテンション上がりましたが、今年も実りある良い学会でした!
そういえば人工血液の話はあれから聞きませんが、製品化はまだかなぁ…。
今年はですね、「食物アレルギーを気にするあまり栄養障害による皮膚病が増えてきた」とか、「血管肉腫(めちゃくちゃ悪性のがん)に、思ったよりは抗ガン剤が効くかも??」とか、良いお話がたくさん聞けましたよ~。
その中でも、特に今回テンアゲだったのはですね、「免疫チェックポイント阻害剤」についてのお話ですね。
「当たり前のように言いやがって、そんな小難しい薬知らんわ!」
という声が聞こえてきそうですが、「オプジーボ」って言ったらなんか聞き覚えないですか?
昨年、ノーベル賞で話題になった新しいがん治療薬です。あの時はワイドショーとかでもそればっかりやってましたね。
https://www.asahi.com/topics/word/%E6%9C%AC%E5%BA%B6%E4%BD%91.html
今回の学会では、それを犬用に開発できないかというお話があったのです。
とりあえず、「免疫チェックポイント阻害剤」とはなんぞや、ということを説明しましょう。
まずはがんの発生についてですが、がん細胞というのは、正常な細胞が分裂・増殖する過程で、なんかの手違いでうまくコピーされなかったことで生まれます。オフィスで誰かがコピーをミスするような、ちょっとした手違いです。
そしてこれは、健康な人の体でも毎日毎日どこかで起こっているのです。老いも若いも関係ありません。
生まれたがん細胞はどうなるのかというと、生まれたそばから免疫細胞にやっつけられます。かわいそうな話ですが、そのおかげで我々は、がんを発症せずに健康に過ごしているわけです。
この時にうまく免疫が働かないと、がん細胞はそのまま間違ったコピーを続けてネズミ算式に増えていきます。その結果、もう自身の免疫機能だけではガンを消せなくなった状態、これが「がんを発症した状態」と言えます。
免疫機能は年とともに衰えるし、コピーミスは年とともに増えてしまいます。そのため、がんを「発症する」のは基本的にお年寄りが多くなるわけです。
なので、体の中では常にがん細胞と免疫細胞の戦いが繰り広げられているのですが、がん細胞もただやられるばかりではなく、免疫細胞から逃れるための様々な能力を持っています。
その一つが、「免疫チェックポイント因子」です。
がん細胞は「PD-L1」という因子を持っており、これが免疫細胞であるTリンパ球の「PD-1」という因子に触れると、そのTリンパ球は戦意喪失したように、がん細胞と戦わなくなってしまうのです。
ノーベル賞を取った本庶先生は、このリンパ球のPD-1を発見し、がん細胞の免疫逃れのメカニズムを解明しました。
そして、じゃあそのPD-1を邪魔する薬があれば、ちゃんとTリンパ球はがん細胞と戦い続けてくれるはずだ、ということで生み出されたのが「免疫チェックポイント阻害剤 オプジーボ」なのです。
さて、このオプジーボ。PD-L1を持っているがんはかなり悪いものが多いので、これまで治療法がないとされていた様々ながんに効果が期待できるということで、「夢の新薬」なんて呼ばれました。
その実、副作用もあるし、高価だし、単独でがんを完治させるのは難しいし、まだまだ研究の必要な薬ではありますが、「がん免疫療法」という「第4の選択肢」が増えたことで、がん治療が大きく前進したのは間違いないでしょう。
(今までがんに対する武器は、「手術」「抗がん剤」「放射線」の3つが主でした。)
説明が長くなりましたが、これを動物用にできないかという動きが早くも出ているらしいのです。
詳しくは省きますが、「オプジーボ」はヒト抗体を用いた薬なので、犬の体に入れるとアナフィラキシーショックを起こす可能性があります。犬に使うにはイヌ抗体で作るのが望ましいのです。
ということで、すでに北大で動物用に開発が進んでいるそうです。
今までだったら「アゴを切除しないといけない」悪性黒色腫に、
「足を切り落とさなきゃいけない」骨肉腫に、
「あっという間に転移して死んでしまう」血管肉腫に…
なかなか太刀打ちできなかったこういう腫瘍に、一泡吹かせられるかもしれないと思うとワクワクしますな!
実際、従来の治療に比べて3倍くらいに余命が伸びそうというような、良さそうなデータも出ているようですし、期待して待ちましょう!
まぁ、問題は値段なんですが…。願わくばせめて数十万くらいで使えるようにできないかなぁ…。
オプジーボは販売当時、年間の治療費が3500万もかかる高額医療でしたが、当時に比べ半額以下まで価格改定されていることと、そもそも保険適用になるので患者負担は1割とかなんですよね。
動物薬は原価がそのまま飼い主さんの懐を直撃するので、何百万もするようだと使い物になりません…。
製薬会社さんにはぜひ頑張っていただきたいですね…!
そんなこんなで、ワクワクの止まらない学会でありました。
あ、そういえば、NHK「つくってあそぼ」のワクワクさんがユーチューバーになったらしいですね。全然関係ないですが。笑
好きだったなーワクワクさん。笑