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避妊手術と子宮蓄膿症のお話 ~若いうちの手術は買ってでもしろ!?~
19.01.19(土)
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みなさま、あけましておめでとうございます!
副院長の佐野です!
言うて、もう1月も半分過ぎましたけどね。
嫁ちゃんの実家にはまだこれから挨拶に行くので、私としてはまだまだ正月続行中のつもりです。笑
ところで、新年といえば福袋ですね。私あんまり福袋って買わないんですが、今年は珍しく元旦から初売りに行って、変なテンションのまま買ってしまいましたよ。
「ヴィレッジヴァンガード」の福袋。笑
ロクなもんが入っていないと噂のガラクタ袋ですが、はたしてその実態や如何に…。
順番に出していきましょう…。
いや~、噂にたがわぬガラクタぶりですねぇ。笑
これで3000円だったかな?
これが初心者向けの袋らしいので、他の袋にはさぞ使いにくいグッズが目白押しなのでしょう…。
柴犬クッションが一番使ってますかね。可愛くはないけど、なかなかの抱き心地です。笑
来年はもういいかな…って言いながらまた好奇心に負けそうな気もする。笑
いや~いい無駄遣いした!そんなお正月でした。
さてさて、画像のせいでずいぶん前置きが長くなりましたが、今回の本題はこっからです!
今日は、「子宮蓄膿症」のお話を書こうと思います。
前回のブログの「特発性免疫介在性血小板減少症」に比べるとかなりシンプルですね。
漢字の通り、子宮に膿(うみ)がたまる病気です。
治療法もシンプルで、基本的には膿のたまった子宮を手術で取り除くだけです。
(薬で治療する方法もあるのですが、手術に比べ成績が悪いので通常は行いません)
が!
治療しなければだいたい死にます。シンプルですね~。
そんなわけで話は単純なのですが、困るのが発生率の高さです。
避妊手術をしていない犬での発生率が15%くらいと言われており、子供を産んだことのない犬での発生率が、産んだことのある犬よりも高いと言われています。
なので、だいたい5~6頭に1頭くらいの確率でしょうか。
ただし、避妊手術をしていればまずかかりません。
…まぁ、「卵巣摘出のみで子宮が残っていて、特殊な病気にかかり性ホルモン製剤を投与した」など、一定の条件下では避妊手術してても発生するらしいですが…。見たことはないなぁ。
私が以前勤めてた病院は基本的に卵巣摘出だけでしたが、それでもいなかったんだからかなりレアなケースでしょう。
うちの病院は原則的に子宮も取り除きます。キズは大きくなりますが、レアなケースでも芽は摘んでおきたいので。
ともかく、今日お話したいのは、避妊手術は若くて元気なうちにしましょうね!ということなんですが、それだともう話が終わってしまいますので、実際に子宮蓄膿症にかかるとどんな感じなのか、最近来られたワンちゃんをご紹介しましょう。
9歳の柴犬「あんず」さんです。クッションとは全く関係ありません。笑
あんずさんは、少し前から食欲が落ちてきていて、さらにここ1週間くらいで、妙にたくさん水を飲むようになったということで来院されました。
話を聞くと、避妊手術はしておらず、発情出血(人間の生理みたいなもの…厳密には違うのですが)をここ数年見ていないということでした。
外陰部を見てみると、発情してるわけでもないのに何だか腫れぼったい…。
熱も39.7℃、発熱しています。
これだけ情報があれば、獣医さんなら大抵考えることは同じでしょう。教科書に載せられるくらい典型的なパターンです。
問診は非常に優秀な検査ですね。話はいくら聞いてもタダですし。笑
エコーを見てみると、思った通り、パンパンに膨らんだ子宮が見えました。子宮蓄膿症ですね。
血液検査では、よく似た症状を出す腎臓病や糖尿病の可能性が否定され、即日入院、即日手術となりました。
ちなみに、食欲や元気の低下はどんな病気でも出る可能性がありますが、水をよく飲む・おしっこが増える、っていうのが腎臓病・糖尿病・子宮蓄膿症にわりと特徴的な症状です。
今回は、飼い主さんが認識していたのは「なんとなく食欲が落ちてる」という程度の症状でしたから、「ほっといたら死にます」と言われればそりゃあびっくりするでしょう。
その点は申し訳ないのですが、実際そうなので仕方がないのです…。
そんなわけで手術です。
全身麻酔をかけて、おへそのあたりから膀胱の近くまで、大きくお腹を切ります。
(以下臓器の画像が出ます。苦手な人は…えー、注意してください。笑)
…というわけで、無事に手術は終わり、4日後に退院しました。
ただその間も、結構お高い抗生物質とかを使って、油断なく治療しましたので、どうしても費用はかかります。全部で13万くらいかかったかな?
とはいえ、これでもあんずさんは比較的すんなり治った方でして、貧血や止血異常、免疫異常が重度だと、手術後も色々な治療を継続する必要があります。
ふつう柴犬なら、健康な子の単純な避妊手術だったら4~5万くらいで済みます。入院も1泊だけ。
金額は病院によってマチマチでしょうが、「子宮蓄膿症の治療より避妊手術の方が圧倒的に安い」のは、どの病院でもたぶん間違いないと思います。
手術の成功率についても、健康で若い子の避妊手術なら99%以上(麻酔をかける以上100%とは言えません)ですが、歳をとって具合が悪い子の手術となると、術中死のリスクが非常に高くなります。
実際さっきのあんずさんも、麻酔をかけた後、突然ものすごい徐脈(心拍数が少ないこと)になってヒヤリとしました。薬で心臓をアシストしつつの手術になりましたが、なんとかもちこたえてくれて良かった…。
最近は避妊手術がだいぶ普及してきて、大人のわんちゃんで未避妊という子は少数派になってきました。
それでもやっぱり、来るんですよね。子宮蓄膿症。多いんだなぁと実感します。
私は、犬や猫をペットとして飼うだけなら、基本的には避妊手術は若いうちに実施することをおすすめします。
ちなみに猫は、子宮蓄膿症は犬よりもなりにくいのですが、発情に伴う外出欲や鳴き声が問題になることが多いですね。
もちろん避妊手術には、メリットとデメリットどちらもあります。ですが現状ではメリットの方が勝っていると判断する獣医さんが大半じゃないでしょうか。
避妊手術のメリットとしては、
①発生率・死亡率ともに高い子宮蓄膿症を回避できる。
②早期の避妊手術で乳腺腫瘍の発生率を8~90%程度抑えられる。
③発情に伴う体調変化に煩わされなくなる。
④発情に伴う交尾欲とは裏腹な、「飼育下のため交尾させてもらえない」というジレンマ・ストレスがなくなる。
⑤偶発的な妊娠が起こらなくなる。
⑥総合的に寿命が延びる傾向がある。
…こんなところでしょうか。
もちろんデメリットもあります。
①消費カロリーの低下による太りやすさ。
②手術後、まれに失禁や尿漏れが起こる子がいる。
③ホルモン失調による皮膚症状などが起こる可能性がある。
④いくつかの腫瘍や関節疾患の発生率が上がる可能性がある(研究の信憑性について未だ議論の余地あり)
デメリットの④についてが気になるところではありますね。
「そういう研究報告がある」のは事実ですが、世界的に見てもまだまだ一般的に受け入れられていることではないと思います。
すごく乱暴に単純化して言えば、「避妊手術をするとガンが増える」のか、「避妊手術をすると寿命が延びるから、最終的にガンで亡くなる子が増える」のかわからないから、鵜呑みにはできないっていうようなことです。
なので現状では何とも言えません。今後、犬種ごとや癌の種類ごとに細かく発生率がわかってくれば、もしかしたら「避妊手術をしない方が良い犬種」とかが出てくるかもしれませんね。
今はおそらくどの動物病院にかかっても、だいたい避妊手術は勧められるでしょう。私も勧めますし。笑
ですが、何か気になることがあればぜひ聞いて、メリット・デメリットを天秤にかけて考えてみてもらえたらと思います。
タイトルには「買ってでもしろ」なんて書きましたが、手術について知って、納得することが重要ですね。
というわけで、子宮蓄膿症と避妊手術のお話でした。
避妊手術の話はいつか乳ガンの話を書く時にまた触れるかもしれませんが、今のところ良い写真がないのでまだまだ先になりそうです。
よし、今年の目標!もっと患者さんの写真を撮りまくろう!ただのかわいい猫ちゃんとかも!
ブログのにぎやかしに…笑…あ、イヤなら言ってくださいね。笑
ではでは、新年1発目から長文になっちゃいましたが、みなさま今年もよろしくお願いいたします!