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  • 血小板減少症 ~見かけによらない病気のお話~

    18.12.18(火)

    本文は↓をクリック。

    皆さんこんにちは!副院長の佐野です。

     

    この度わたくし、人生の一大転機を迎えましたよ!!

    「人生の墓場」と名高い、結婚というやつをですね、ついにしてしまいました。笑

    まぁ、もう1年くらい前から同居してましたので、特に何も変わらないんですけど。

    え?嫁の顔?

    ダメです、勝手に出したら怒られますから。

    ごまのかわいい顔でガマンしてください。笑

     

     

    さて。私の墓の話はこの辺にして(墓場にするつもりはないけど!)、今回の本題はコレです↓

    皆さんこれ、なんだと思います?

    なにって、まあ犬のお腹なんですけど、赤い模様が見えますね。

     

    皮膚病??

     

    …ではないんです。実はこれ内出血を起こしている状態なのです。

    「血小板減少症」というちょっと珍しい、でもたまに見かける血液の病気の写真です。

     

     

    「皮膚が赤い」という状態には、代表的な2種類があります。「紅斑」「紫斑」ですね。

    「紅斑」は、皮膚の毛細血管が拡張して太くなっている状態のことで、「充血」とほぼ同義です。虫刺されで赤くなる、みたいなのはこっちですね。

    一方「紫斑」は、皮膚の中で出血している状態で、いわゆる内出血です。打撲によるアザなんかはこれに当たります。

     

     

    写真のワンちゃん「まめちゃん」は、お腹を中心に全身にこの紫斑がありました。

     

    これがすべて打撲によるものだとしたら相当な死闘を繰り広げた後でしょう…マルチーズ×シーズーMIXの闘犬なんてめっちゃ弱そうですが。笑

     

    当然そんなことはありません。飼い主さんはトリミングから帰ってきたらこうなっていたとお話されましたが、別にトリミングショップで虐待されたとか、そういうことでもありません。

     

    体のどこを触っても、痛いわけでも、かゆいわけでもないのです。

     

    なんと検査の結果、出血を止める働きをする細胞「血小板」が、ただの一つもないことがわかりました。

    PLTというのが血小板。1µl中に20万個以上が正常です。1µlというのは1mlの1000分の1で、1滴にも満たないような量です。

     

     

    血小板が減る病気はいくつかありますが、小型犬では

    「特発性免疫介在性血小板減少症」

    というやつが一番多いと言われています。

     

    「特発性」は「原因不明」、「免疫介在性」は「免疫が暴走している」、ということをそれぞれ表しています。

    つまり、

    「理由はないけど、免疫が暴走して、自分の血小板を片っ端から壊してしまう病気」

    ということです。

     

    血小板は血を固めるための主役ですから、これが無くなってしまうとすごく出血しやすい状態になってしまい、何もしていないのに体中に内出血が起こるというわけです。

     

     

     

    まめちゃんは他に疑わしい病気もなかったため、暴走した免疫機能を落ち着かせるお薬で治療を始めました。

    いわゆる「ステロイド薬」ですね。

     

    ステロイドと言うと、ドーピングで使われたり、副作用が多いというイメージがあるかもしれません。飼い主さんの中には、ステロイドと言うだけで敬遠する方もいらっしゃいます。

     

    ですが、適切な使い方をすれば大きな副作用は出ず、逆に強力な武器になります。

    まめちゃんも、なんの副作用も出すことなく、5日ほどでこの通り!

    紫斑はキレーに消えましたね。

     

    とはいえこのままステロイドを飲み続けるのはダメなので、ゆっくり減らしていきました。

    治療開始から2か月くらいでステロイドの投与はやめましたが、今のところ再発はしていません。

     

     

     

    さて今回のこの病気。まめちゃんは治療に対する反応も良かったし、何より発見が早かったのが良かったのですが、重度になると命に関わります。

     

    血が止められなくなるということは、ちょっとしたことで出血するのです。走っただけ、ジャンプしただけ、くしゃみしただけ、ウンチしただけ…などなど。

     

    皮膚の内出血だけならそれほどの出血量にはなりませんが、鼻血や下血となると話は別です。出血が多ければどんどん貧血してきますし、鼻や腸のなかには大量の細菌がいますから、出血部位から感染を起こすこともあります。

    また、免疫の暴走の程度によっては、血小板と一緒に「赤血球」も壊される場合があります。この状態は「エヴァンス症候群」と呼ばれ、治療反応率も悪く、救命率はガクッと落ちます。

     

     

    たいてい、最初は皮膚の内出血から始まることが多いです。が、

    「皮膚病かなぁ?バリカンか何かこすったのかな?」

    なんて思って放置していたら、突然血を吐いて倒れる、なんてことにもなりかねません。

    まめちゃんは、早めに来てくれて本当に良かった!

     

    皆さんも、ぜひ頭の片隅にでもとどめておいてください。あの顔にピンときたら、ならぬ「あの皮膚にピンときたら」です!

     

     

    ところで、このブログもめっちゃ更新は遅いですが、かれこれ1年を迎えようとしています。今年はこれが最後の更新になると思いますが、来年もお付き合いいただけると嬉しいです。

    それでは皆様、よいお年をお迎えください!

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